臼うすってなに？

今いまではモチつきの道具どうぐとして知しられるウスとキネですが、もともとは「粉こなつくり」(こなひき)の道具どうぐとして、ひとが食たべ物ものを作つくるために重要じゅうような役目やくめを負おっていた道具どうぐです。
現代げんだいも使つかわれている、モチつきのウスとキネは、今いまからおよそ300年前ねんまえには使つかわれ始はじめていたと考かんがえられています。そのころ、しごとの目的もくてきに応おうじて、ウスとよばれる道具どうぐが、それぞれに分わかれていったらしいのです。そのため、現代げんだいではまったく異ことなる形かたちをした道具どうぐが、同おなじ「ウス」という名前なまえでよばれているのでしょう。それでは、ウスを使つかってするしごとの目的もくてきとはなんでしょうか。

ひとつは、コメやムギ(大麦おおむぎ・小麦こむぎ)、ソバなどを取とり入いれた後あと、実みのカラを取とって食たべられるようにするための「だっこく」作業さぎょう、もうひとつはコメやムギ、ソバなどの「だっこく」をすませた後あとの実みや、ダイズなどの豆まめを「こなにする」ための「せいふん（製粉）」作業さぎょう、さらに、モチを作つくったりするための「もちつき（調理ちょうり？）」などの作業さぎょうがあります。

さて、ウスとよばれる道具どうぐには、おおきく二ふたとおりの種類しゅるいがあります。ひとつは、キネという棒ぼうでついて、もちやだんごを作つくるためのもののなかまを「ツキウス」とよびます。もうひとつは、2個この平ひらたい石いしなどを上下じょうげに重かさねて、石いしと石いしの間あいだにコメやムギなどの実みや豆まめを入いれてこすり、こなを作つくる「ヒキウス」（「スリウス」ともいう）という道具どうぐがあります。
さらにややこしいことに、ウスの材質ざいしつによって「イシウス(石臼)」という呼よび方かたがありますが、多おおくの場合ばあいは石臼いしうすはヒキウスであることが多おおいですが、ときにはツキウスもあります。

ここでモチつきウスのなかまを見みてみましょう。直径ちょっけい60センチぐらいの丸太まるたの小口こぐちを彫ほってくぼめたものが、現代げんだいのモチつきウスです。キネは直径ちょっけい10センチ×長ながさ40センチぐらいの短みじかい木きの棒ぼうに１メートルぐらいの横棒よこぼうが付つけられています。これを「ヨコギネ」といいます。
また、100年前ねんまえまでは使つかわれていたウスとキネのなかまには、「ニトバル(二斗ばる)」とよばれるだっこく（脱穀）用ようの大型おおがたのウスとヨコギネがあり、藤沢市ふじさわしでも麦むぎの脱穀作業だっこくさぎょうのために、むかしはさかんに使つかわれていました。ニトバルで使つかわれるキネは、とても大おおきくて重おもく、打うち付つける打撃面だげきめんには刃（は）とよぶするどい縁ふちが付つけられています。

モチつきウスとニトバルのほかには、もっとむかしから使つかわれてきた「タテウス（竪臼）」「タテギネ(竪杵)」があります。これはモチつきウスよりも小こぶりで、キネは棒ぼうのようです。「タテウス」は胴体どうたいがくびれていることから「クビレウス」という呼よび名なもあります。もっとも古ふるくから(1000年ねんいじょう昔むかしから)使つかわれてきたウスですが、もともとはコメやムギのつぶからコナを作つくるための道具どうぐとして使つかわれてきたものです。300年ねんぐらい昔むかしからコナづくりのしごとを「ヒキウス」でするようになった後あとも、お祭まつりの食たべ物ものづくりのためだけに使つかわれ続つづけてきたため、農家のうかでは昭和しょうわの時代じだい（やく40年前ねんまえ）までたいせつに保管ほかんしていました。

回転式かいてんしきの臼うすについて調しらべてみよう！

小麦粉こむぎこや米粉べいふんなど、農家のうかで食たべ物ものにする粉こなを自分じぶんの家いえで作つくらずに買かってくるようになったのは、ここ60年ねんほどのことです。ソバやダンゴをつくるためにウスとキネを使つかって「ついて」「コナ（粉）」を作つくるには、たいへんな労力ろうりょくと時間じかんがかかりました。そのため、むかしから「ソバ」「ウドン」「ダンゴ」「モチ」は、お祝いわいやおまつり、お客人きゃくじんをもてなすための「ごちそう」とされてきたのです。
コメやアワ、ヒエ、キビなど皮かわを取とってつぶのまま調理ちょうりして食たべる「粒食（りゅうしょく）」に対たいして、コムギやソバなどコナにひいてから調理ちょうりして食たべる「粉食（ふんしょく）」という食たべ方かたの習慣しゅうかんがあります。

ソバやウドンなどは、現在げんざいでは、どれも手軽てがるな食たべ物ものの代表だいひょうのように思おもわれていますが、そのように考かんがえられる原因げんいんとなったのは、ヒキウス(スリウス)が一般いっぱんの家いえに普及ふきゅうしてコナ作づくりが楽らくになったためでしょう。今いまから300年ねんほど前まえからそうなったと考かんがえられています。コナづくりが楽らくになったために、食生活しょくせいかつがそれまでとは大おおきく変かわり、毎日まいにちの食事しょくじのこんだてにダンゴが多おおく登場とうじょうするようになりました。

石いしのヒキウスのすりあわせ面めんにきざまれた溝みぞは、おおきく分わけて二ふたつのパターンがあることが知しられています。ひとつは6個この区画くかくに溝みぞを切きるものと、もうひとつは8個この区画くかくに溝みぞを切きるものです。藤沢ふじさわ市内しないではどちらも確認かくにんされていますが、いっぱんに東日本ひがしにほんは6区画くかくが多おおく、西日本にしにほんには8区画くかくが多おおいと言いわれています。これは、ヒキウスを作つくる技術ぎじゅつを持もった人々ひとびとが別々べつべつの集団しゅうだんを作つくり活動かつどうした結果けっか、東日本ひがしにほんと西日本にしにほんで偏かたよりが生しょうじたためと説明せつめいされています。また、石製いしせいのヒキウスの材料ざいりょうとなる石材せきざいは、地元じもとでとりやすいものを加工かこうしたようです。藤沢ふじさわ市内しないでは、安定あんていした安山岩あんざんがんを使用しようしたものが多おおく見みられますが、中なかにはタマネギの皮かわのように劣化れっかしてしまう石いしで作つくられたヒキウスも見受みうけられます。もともと石製いしせいのヒキウスは、ふつうの農家のうかでは手てが出だせないほど高価こうかで、寺てらや有力者ゆうりょくしゃだけが所有しょゆうしたようです。コナをかんたんには手てに入いれられない時代じだいが、長ながく続つづいていたことでしょう。そのような一面めんからは、江戸時代えどじだいの年号ねんごうが刻きざまれた石製いしせいのヒキウスが注目ちゅうもくされます。
このようなヒキウスを使つかってコナをひく技術ぎじゅつは、日本にほんには千年せんねん以上前いじょうまえに外国がいこくから伝つたえられたと考かんがえられています。ヒキウスを左回ひだりまわしにつかうことは、その当時とうじから伝つたえられてきたと考かんがえられます。なぜなら、世界中せかいじゅうで左回ひだりまわしが多数派たすうはとなっているからです。ヒキウスを右回みぎまわしで使う地域ちいきもないわけではありませんが、ごく限かぎられています。とても古ふるい起源きげんを持もつ石いしのヒキウスでコナをつくる文化ぶんかは、パンを焼やいて食たべる文化ぶんかの一部いちぶとして世界中せかいじゅうに伝つたえられたからとする説せつがあります。

いろんな臼うすを見みてみよう！

私わたしたちの身みのまわりから、姿すがたを消けしてしまった石製いしせいのヒキウスですが、町まちの手打てうちそば屋やなどでは、現代げんだいでもわざわざ使用しようしている例れいもあります。
ここで藤沢市ふじさわしで収蔵しゅうぞうしているさまざまな石製いしせいヒキウスを見みてみましょう。