制作時期:天保11年~13年(1840~1843)頃。
板元印なし
横長16.8cm、竪長11.2cmという大変小さな画面に、七里ヶ浜から見た江の島の様子が描かれます。このような小さい浮世絵は豆判と称されますが、本作は小奉書(約47cm×約33cm)を八ツ切りにしたサイズに近いと考えられます。
手前の切り立った岸壁は小動岬と思われ、上部に松が描かれます。小動岬の名称は、その頂に小動の松という、風もないのに揺れたと伝えられる松に由来します。
諸国名所シリーズのうちの七里ガ浜の図で、前景に切り立った断崖を置き、正面中景に海に浮かぶ江の島を描き、遠景には富士山と帆かけ船を施すなど、遠近感を表現するのに心憎いばかりの工夫をこらしています。他にこうした小品に江の島が関係するのは「諸国名産」(有田屋清右衛門版)があり「相州江の島産鮑かす漬細工」があります。そして更に小さいその半分の作品には、本朝名所の縮図である「諸国名所相州七里ヶ浜」があります。