江戸の地誌と名所について記された全20巻からなる地誌です。
斎藤家は徳川家康の江戸入府の天正18年(1590年)以前からの名主であり、草創名主として有名な家柄でした。祖父の斎藤長秋(幸雄)の代から東都名所図会として編纂が始まり、父の莞斎(幸孝)、そして月岑(幸成)の三世代が引き継ぎながら編纂し発行しました。江戸名所図会は刊行時の書名です。武蔵、江戸から相模、下総の一部までの地名の由来や寺社、旧跡、故事などについて記しており、当時から名著としてしられ、現代でも江戸時代の景観や風俗を研究する上では欠かせない一級資料です。
また月岑は、大田南畝が編纂したと伝わる浮世絵師の記録誌「浮世絵類考」の増補を編纂したことでも知られています。
挿絵の長谷川雪旦は俯瞰的な描写を得意とした絵師で、唐津藩(現在の佐賀県の一部)、尾張藩(現在の愛知県の一部)の御用絵師でもありました。月岑、雪旦のコンビは同じく江戸の年中行事を記した「東都歳時記」も刊行しています。