旅先で出会った笠をかぶった六十六部(行脚僧)をはさんで、弥次喜多が見得を切って、ふざけています。
弥次さんは歌舞伎役者の真似をして「なりたやならぬ、とちめんや(弥次さんの屋号)」と名乗りを上げています。とちめんとは、トチの実の粉を小麦粉や蕎麦粉とまぜて、うどんのようにして食べた麺のことです。すぐに硬くなるため、急いで処理する必要があり、栃麺棒を忙しく振るっている様が大騒ぎしているように見えることから、落ち着きのない慌て者を「栃麺棒」にたとえていました。そのため、たえず大騒ぎしている弥次さんは「栃面屋」という号になっています。
製作時期:万延元年(1860)。
板元:當世屋(品川屋久助)
このシリーズは大ヒットした十返舎一九の『東海道中膝栗毛』を摸して作られています。各宿には弥次さん、北さんが登場し、芳幾が二人のくりひろげる道中模様をユーモラスに描き、魯文が各宿のテーマとなる文章、狂歌一句と二人の会話をおもしろおかしく記しています。