鎌倉時代、沼津宿と三島宿の間に流れる黄瀬川に絡めた亀鶴という遊女を題材としています。傾城とは美人や遊女を表しています。実在する川は「黄瀬川」の字ですが、歌舞伎演目『寿曽我対面』では「喜瀬川」となっており、喜瀬川亀鶴という役名の遊女が登場し、この画と関連付けられています。物語では、亀鶴は美しく賢いと評判で、曽我兄弟の父の敵である工藤祐経の宴に招待される立場でした。また、背景に描かれた黄瀬川は亀鶴が最期に身を投げた場所ともいわれています。似顔で描かれた五代目瀬川菊之丞は、この画の刊行時には既に故人であり、往年の名優が描かれた作品となっています。