養蚕(製糸)は、幕府の奨励や藩の殖産政策により、幕末期には各地で盛んになり、養蚕・製糸にかかわる浮世絵も盛んに描かれるようになりました。
「蚕いとなみの図」は、蚕から生糸が作られる作業過程を図にしたもので、作業する人々に交じって七福神が働いているユーモラスな作品になっています。蚕から生糸ができるまでの工程が8場面に分けて描かれています。
場面ごとに短冊形の中に、作業内容が書かれています。
① 生まれた蚕を育てるために紙に移します
② 蚕の餌の桑の葉を細かに刻んでいます
③ 大きくなった蚕のために桑の葉を集めます
④ 十分に育った蚕を箱へ取り分けます
⑤ 繭を煮て、綿にします ⑤綿を干します
⑥ 繭を引いて、生糸を作ります
⑦ 蛾になる蚕の繭を枝から取り出します
⑧ 蛾になった蚕を空に放します
なぜか、⑤が2か所ありますね。続き作業だからでしょうか。説明に出てくる綿は、木綿ではなくて、真綿です。真綿は、繭を煮て引き延ばして綿状にした絹の元です。交じって働いている七福神は、①大黒天 ③布袋 ④毘沙門天 ⑤福禄寿 ⑥恵比寿 ⑦寿老人 ⑧弁財天です。神様たちも機嫌よく働いています。七福神と一緒なら、質のいい生糸ができあがりそうです。