制作時期:弘化4年~嘉永5年(1847~1852)頃。
板元:山田屋庄次郎(山庄)
駕籠から降りたばかりの3人の美人が江の島弁才天の開帳に詣ようとしているところでしょうか、美人見立ての江の島詣です。右の麻葉模様の浴衣の女性は腰のところで細帯を締めなおしています。中央と左の女性は「柏木」、「早蕨」、「藤裏葉」、「蜻蛉」などの源氏香の模様を散らした揃いの浴衣を着物の上に重ね着し日傘を持っています。この様に普通の着物の上に浴衣を着るのは旅をする時の合羽の代用によく用いたといわれます。
江の島に関する他の錦絵に描かれた女性はほとんどこの装いをしています。海辺の旅となる江の島詣には潮風を防ぐ意味で必需品であったものなのでしょう。中央の女性は勝山髷、左右の女性は島田髷にべっ甲の櫛、笄簪と銀の平打の簪を飾っています。全体に粋ないでたちは、いずれも芸事に関係する女性たちと考えられます。なおこの版画が出版されたのは、嘉永4年辛亥(1851年)の窟弁財天の開帳に合わせたとも考えられます。この開帳を明記した作品を、広重は大判3枚続で3組描いており、これもその一つです。