平安初期の優れた歌人として知られる在原業平は様々な文芸作品に取り上げられ、六歌仙を題材とした歌舞伎の所作事『六歌仙容彩』にも登場します。
本シリーズで池鯉鮒(知立)の図に在原業平が選ばれた理由は、平安時代に成立した歌物語「伊勢物語」より、第九段(東下り)「三河の八橋」(現在の愛知県知立市に所在)で在原業平を思わせる人物が、燕子花が美しく咲く様を見て「から衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来ぬる たびをしぞおもう」と詠み、都に残してきた人を思って涙するという場面がからきています。さらに、外題の短冊枠には『伊勢物語』を連想させる燕子花の花があしらわれています。
これは『役者見立東海道五十三駅』というシリーズです。
このシリーズは、全部で一四〇点確認されています。
作者は三代豊国、とても人気の高かった絵師です。
背景には宿場の風景が描かれており、手前の人物は、宿場と関わりのある歌舞伎の登場人物です。
また人物は、有名な役者の似顔絵で描かれています。