日本橋を背景にカツオ売りに扮する三代目坂東三津五郎が描かれています。東海道の起点である日本橋には当時、魚河岸(魚市場)があり、江戸で初夏の味覚として好まれた初ガツオが売られていました。
本図では文化10年(1813)中村座で初演された十二ヶ月の所作事(十二変化)「四季詠寄三大字」の4月の曲にあたる富本節の「鰹売り」の三代目坂東三津五郎を描いています。画面には収まってないですが、カツオを入れた盤台を掛けた棒を肩に担いでいます。三代目坂東三津五郎は本図刊行時には故人でした。
これは『役者見立東海道五十三駅』というシリーズです。
このシリーズは、全部で一四〇点確認されています。
作者は三代豊国、とても人気の高かった絵師です。
背景には宿場の風景が描かれており、手前の人物は、宿場と関わりのある歌舞伎の登場人物です。
また人物は、有名な役者の似顔絵で描かれています。