制作時期:天保4年(1833)頃。
板元:川長
江の島が画面一杯に描かれ、将来展開されるべきさまざまな要素が含まれています。色彩的には藍や緑がかなり強く出ていて、後のおさえた色調のそれとは異なっていますが、空間の処理の仕方に広がりを見せています。また前景として、いく分、類型的な三角形の大きな波も広重らしい特徴を表しています。
岩場で遊ぶ人々、右1枚の部分には、それが平坦であるため俎板岩(魚板岩)といわれる所にござを敷き、酒をくみ交わしている場面があり、中1枚には女性に何かをねだる裸の子どもがいます。さらに左1枚には旅人が銭を投げる仕草をしていて、その銭を海中に飛び込んで拾おうとする子どもがいて、江の島での旅人の風俗が端的に画面に出ている描写となっています。