草双紙『児雷也豪傑譚』に登場する義賊「児雷也」です。本図は嘉永5年(1852)初演の『児雷也豪傑譚話』より少し前に制作されており、役者は、既に故人であった五代目瀬川菊之丞が選ばれています。国貞(三代豊国)の見立てた「児雷也」のイメージは、菊之丞が最適だったのでしょう。
実際の宿場名は「興津」ですが、画題は音を通わせて「沖津」と書かれ、画題枠には「波」が描かれています。つまり、「沖つ(興津)白波(盗賊)」と二重のイメージが掛けられているのです。
これは『役者見立東海道五十三駅』というシリーズです。
このシリーズは、全部で一四〇点確認されています。
作者は三代豊国、とても人気の高かった絵師です。
背景には宿場の風景が描かれており、手前の人物は、宿場と関わりのある歌舞伎の登場人物です。
また人物は、有名な役者の似顔絵で描かれています 。