仇討ちの物語『伊賀越道中双六』に登場する敵役の澤井又五郎(No.31)とその家来で飛脚の澤井助平 (No.32)です。No.31では助平が茶店の店先にある遠眼鏡で、吉田宿にいる馴染みの遊女が他の客と睦まじくしているのを見て逆上するという場面が描かれていると考えられます。澤井又五郎は劇中その場面では不在です。また、No.31とNo.32は背景が続きになっています。No.32は役者見立東海道の目録に掲載されている最初に出版された五十三次の一図であるため、No.31が背景を後から合わせて描いています。
演じる役者は澤井又五郎が六代松本幸四郎、澤井助平が初代坂東三津右衛門です。両人とも作品出版時にはすでに故人でした。
これは『役者見立東海道五十三駅』というシリーズです。
このシリーズは、全部で一四〇点確認されています。
作者は三代豊国、とても人気の高かった絵師です。
背景には宿場の風景が描かれており、手前の人物は、宿場と関わりのある歌舞伎の登場人物です。
また人物は、有名な役者の似顔絵で描かれています。