橋李囿 序文
江の島の風光を詠んだ【詩文】【田舎版】。
現在の藤沢市北部、御所見地区周辺の人々が詠んだ漢詩と和歌の詩文集。八景は、金亀山秋月、岩屋之晴嵐、小兒淵夜雨、鵜嶋之落雁、東浦之帰帆、西浦之夕照、両山之暮雪、江嶋寺晩鐘。詠者の居所は、現藤沢市の遠藤、打戻、宮原、用田に加え、現 寒川町の小谷、小動、現 綾瀬市の吉岡となっています。詠者の中で、用田の烏東は明和4年(1766年)3月、大磯鴫立庵再興の記念集として編まれた『湘海四時』に入句句しています 。
この書は版の摺りにムラが多いのが目に付きます。当時の出版は江戸・大坂・京都が中心で、それ以外の地方で摺られたものは「田舎版」と呼ばれていますが、この書はおそらく地元の藤沢地域で摺られたもので、内容とあわせ、非常に貴重なものと言えましょう。