製作時期:明治8年。
板元:山清(山崎屋清七)
馬入川の渡しの景色を描いています。馬入川は相模川の下流域の名称です。明治11年(1878)に馬入川に最初の木桁橋が架けられるまで、江戸時代と変わりなく渡し舟を利用していました。
馬入の渡しは、富士山と大山を望める名所として、初代広重の頃からも浮世絵に描かれました。
茅葺き屋根の家屋や、渡し舟に乗る着物姿の人々など、一見、江戸時代の景色と変わらぬように見えますが、渡し舟に乗せられた人力車や、この舟に乗り遅れたのか、岸に立ちつくしている男性が手に持っている洋傘などから、文明開化の影響が感じられます。
三代広重描くこのシリーズは、明治前期の東海道各宿駅の風景が華やかな色彩(幕末から明治初期に海外からあざやかな科学顔料が入り使用される)で描かれています。