この二人は「伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)」に登場する、重兵衛(じゅうべえ)とお米(およね)です。人形浄瑠璃や歌舞伎で上演されていた演目で、実際に起こった事件である「伊賀越の仇討ち」がモデルになっています。この事件は忠臣蔵、曽我の仇討ちとともに三大仇討ちのうちのひとつとして知られています。本図の重兵衛は三代目坂東三津五郎(さんだいめばんどうみつごろう)を思わせる似顔で描かれています。
コマ絵に描かれているのは富士山をはじめとした沼津宿周辺の山々と、千本松原(せんぼんまつばら)であると考えられます。千本松原とは、画面右端に見える沼津城の南の海岸沿いに松が植林されている、その一帯の呼称です。