江の島の動物学研究所
動物学研究所(手前の小屋)の外観
“Japan Day by Day”,FIG.151 |
解説
モース博士は、進化論との関わりの中で興味をもった腕足類が、アメリカではその種類が少ないのに対し、日本には豊富に生息していることを聞き、 1877 年(明治 10 年) 6 月 17 日に、その研究と採集を第一の目的として来日しました。
モース博士は、来日後、思いがけず東京大学の教授を引き受けることとなり、大学の教育のための標本や自らの研究資料の採集場所として江の島(当時は、神奈川県鎌倉郡片瀬町に属していましたが、現在は藤沢市にあります。)が推薦されました。
来日 1 カ月後の 7 月 17 日、江の島の海辺の小屋を借り、動物学研究所とし、 7 月 21 日から 8 月 28 日までの間、腕足類の一種であるシャミセンガイをはじめ、数多くの海産動物などを採集しました。
この動物学研究所は、一時的なものでしたが、日本最初の臨海実験所です。現在、三浦市にある東京大学の三崎臨海実験所[ 1886 年(明治 19 年)設立]につながるもので、「江の島」は、いわば日本近代動物学発祥の地であるということもできます。
なお、この動物学研究所の所在地については、江の島の入り口正面にある青銅製の鳥居を東に入った所と考えられていますが、その場については諸説あります。
このスケッチは、“Japan Day by Day”(E.S.モース著)に収録されている動物学研究所の外観を描いたものです。
[参考文献]
(1) 「江の島とモース先生」(「藤沢の歴史」所収)
内田輝彦 1966 年 藤沢の歴史編集委員会
(2) 「江の島におけるモースの生活(続)」(「藤沢市史料集」第24集所収)
服部清道 1980 年 藤沢市教育委員会
(3) 「モースの臨海実験所跡」(モース研究第三号)
磯野直秀 1985 年 モース研究会
(4) 「モースの江の島臨海実験所の位置」(モース研究第八号)
木下明 1995 年 モース研究会
(5) 「モースの江の島臨海実験所の位置」(モース研究第九号)
木下明 1996 年 モース研究会
(6) 「「モース博士の江の島臨海実験所」(モース研究第十二号)
島崎紘司 2000 年 モース研究会
詳細
動物学研究所から荷物を搬出する様子
“Japan Day by Day”,FIG.147
“動物学研究所の室内
“Japan Day by Day”,FIG.172
動物学研究所内での採集資料の選別
“Japan Day by Day”,FIG.158
標本を携えて江の島を引き上げるモース博士一行
“Japan Day by Day”,FIG.191
エドワード S. モース記念碑 1985 年(昭和 60 年)建立