製作時期:安政2年(1855)。
板元:蔦屋吉蔵
矢作川に架かる矢作橋は東海道一の長さを誇る橋でした。橋の上には、槍持を従えた武士の一行の姿が見えます。矢作橋が続く画面奥の高台には、徳川家康の出生地とされる岡崎城が見えます。川には、木材を筏状に組んで運ぶ様子も描かれています。
この画では、橋の長さを強調するのではなく、川岸から橋を見上げる構図で描き、橋の橋脚の大きさでもって東海道一という橋の長さを思わせる斬新な手法といえます。
このシリーズが竪型版であるため、一般に竪絵東海道と呼ばれ、広重晩年(59才)の作品です。
広重の東海道ものは大体において、横型の風景画が多いなかで、竪型物もいくつかあります。この名所図会シリーズではほとんどの宿が鳥瞰図で描かれ、町並み等に遠近法を用い、横判では見られない雰囲気をかもし出しています。