早野勘平と恋人のお軽は、『仮名手本忠臣蔵』に登場する人物で、本図は、天保4年(1833)に初演され、現在は四段目の後に上演される舞踊劇『道行旅路の花聟』の一場面です。勘平の主人の大事に駆け付けられず、取返しのつかない事態から、二人は駆け落ちを決行します。
本図は大判浮世絵とは異なり、「細判」と呼ばれる大きさで、明和から寛政期の役者絵に多く用いられているのが特徴です。
作者の一筆斎(さい)文調生没年不詳)は、明和後期(1764-72)に役者絵に似顔を取り入れ始めた絵師の一人で、役者絵の変化期の中で、重要な人物として知られています。