蔦屋重三郎は、吉原に創業した版本の小売店から身を起こしました。固定客が見込める吉原細見や富本節などの版本の販売する権利を得ながら店舗を拡大していきました。
吉原細見
吉原細見は、吉原のガイド本として販売されていました。展示の吉原細見は天保期の発刊です。
富本節正本「道行野辺之書置」
富本節は、三味線を演奏しながら物語に節をつけて唄う浄瑠璃から派生した謡曲の一種です。義太夫とも呼ばれます。正本は歌詞や節の上げ下げなどを記述した譜面の役割であり、富本節正本は義太夫ブームを背景にかなりの販売数を誇り、蔦屋の運営上の基盤となる主力商品でした。「道行野辺之書置」は、鶴屋南北の「心中天之網島」から派生した通称「紙治物」と呼ばれる、紙屋治兵衛とこはるの心中話の富本節での別称のひとつです。展示中の版本は、三代目富本豊前太夫による正本で、文化年間頃の版行です。蔦屋の在所も通油町から移転し浅草寺雷門前並木町東側になっています。