制作時期:天保年間(1830~44)。
板元:永寿堂
冨嶽三十六景は北斎最大の傑作のシリーズもので、最初に刊行された36枚は「表」といわれ、のち好評のため続刊された10枚は「裏」と呼ばれ、全部で46枚が発行されています。そのうちでも三大傑作といわれるものは、俗に赤富士とよばれる「凱風快晴」、「山下白雨」、「神奈川沖浪裏」です。
これら富士を描いた46種類の作品は、それぞれに共通する技法によって幾つかに分類することが出来ますが、大きく分けると伝統的な日本画の影響の強いもの、中国の漢画的な要素のあるもの、さらに遠近法を取り入れた洋画的表現など三つに分けられます。
この図はそうしたもののうち漢画的な要素のまさったもので、その黄緑色の淡い色調は「相州箱根湖水」のそれを連想させます。そして一見地続きのように見え、他の絵師の表現と較べて、平坦な江の島は山水画を思わせます。