黒:小梅(『隅田春妓女容性』より)か
本作に描かれた美人は、侠客「梅の由兵衛」の妻「小梅」とされています。歯には既婚女性の証である“お歯黒”が見られ、褄の部分には梅の紋様が配されています。また着物は烏の柄となっており、黒の色と対応しています。褄を取りながら船の乗り場に立っていることから、降りた船を見送っているところでしょうか。
五行説において重要な色とされていた「黄」「青」「赤」「白」「黒」の5色に、それぞれ美人が当てはめて描かれています。またこの美人たちは、歌舞伎の登場人物に擬えて描かれており、各色は、その役が決まって着る衣装の色と対応しています。
「青」に描かれているのは、小栗判官ものの物語に登場する照手姫。小栗判官は藤沢の遊行寺とゆかりのある人物で、照手姫は小栗判官の恋人です。