制作時期:天保末期。
板元印なし
小高い丘の上から見下ろすように七里ヶ浜が描かれており、腰越あたりから見た風景であると考えられます。わずかに覗く浜辺には、笠を被り、杖を持った旅人達が往来する様子が描かれます。遠景には雪を頂いた富士が描かれ、上空にある朱色が夕焼のような趣を見せています。
小判(こばん)という小さい画面にも、青・朱・緑・黄の色がバランスよく配されていることが本作の特徴です。
この作品は「相州名所江之嶋金亀山之図」と2枚1組で出版されたもので、ふつう相模の名所と言えば、江の島に次いで七里ガ浜が画題としてとりあげられることが多いのですが、この作品は七里ガ浜の風景を描いたと言うよりは「七里ガ浜より江の島富士遠望」というべき構図です。広重の視点は七里ガ浜を見おろす小高い丘の上から、遠く水平線上の江の島と富士を眺望している図で、あの美しく弧を描くように続く七里ガ浜は、画面の下隅にわずかに人の歩く姿でそれとわかる程度にしか描かれていません。画面の中心はあくまでも江の島と富士です。
七里ガ浜の腰越のあたりから見た風景でしょうか。雪を頂いた富士とその上空の朱のぼかしがあたかも夕焼のような趣を見せ、手前の漁家の黄色が印象に残る作品となっています。