石橋山の合戦のエピソードのひとつに「頼朝の伏木隠れ」があります。頼朝が石橋山の合戦に敗れた後、山中の伏木に隠れているのを、捜索していた梶原景時が姿を見つけましたが、味方には「だれもいない」と告げやりすごし、頼朝を助けたというもので、浮世絵でもよく取り上げられる画題です。
本作では、梶原景時ではなく、平家方の大将格である大庭景親が大きく描かれ、その下の洞穴に「源頼朝卿」らが潜んでいるさまが描かれています。画中の左下には、頼朝に付き従って洞穴に隠れた武将の名が記されています。(安達)藤九郎盛長、土屋三郎宗遠、岡崎四郎義真(実)、新開次郎忠氏、土肥次郎実平、土肥遠平。軍記物では居たと記されている田代信綱の名は見えません。