製作時期(せいさくじき):天保(てんぽう)10年頃(ねんごろ)(1839)。
板元(はんもと):佐野喜(さのきち)(佐野屋喜兵衛(さのやきへえ))

宮宿(みやしゅく)以降(いこう)、京都(きょうと)まで国貞(くにさだ)オリジナルの背景(はいけい)に変化(へんか)しますが、四日市宿(よっかいちしゅく)の背景(はいけい)は例外的(れいがいてき)に広重(ひろしげ)の保永堂版東海道(ほえいどうばんとうかいどう)「四日市(よっかいち)　三重川(みえがわ)」からの引用(いんよう)になります。
三重川(みえがわ)は四日市宿(よっかいちしゅく)の中心地(ちゅうしんち)を流(なが)れる川(かわ)です。草原(そうげん)の向(む)こうは海(うみ)となっており、左端(ひだりはし)の家並(いえな)みの先(さき)に見(み)える柱(はしら)は、湊(みなと)に停泊(ていはく)する舟(ふね)の帆柱(ほばしら)です。また風(かぜ)に煽(あお)られてなびく大(おお)きな柳(やなぎ)の木(き)や、強風(きょうふう)に難儀(なんぎ)する旅人(たびびと)の様子(ようす)も描(えが)かれています。

手前(てまえ)には、眉(まゆ)を落(お)とし、お歯黒(はぐろ)を付(つ)けた妙齢(みょうれい)の女性(じょせい)が描(えが)かれています。
広重(ひろしげ)の保永(ほえい)堂(どう)版(ばん)の図(ず)では、風(かぜ)に飛(と)ばされた菅笠(すげがさ)は旅人(たびびと)のすぐ前(まえ)に描(えが)かれていますが、本作(ほんさく)では手前(てまえ)の女性(じょせい)を挟(はさ)んで、菅笠(すげがさ)がはるか彼方(かなた)に転(ころ)がっています。

国貞(くにさだ)(三代豊国(さんだいとよくに)の前名(まえな))描(えが)くこの東海道(とうかいどう)シリーズは、各宿(かくやど)の風景(ふうけい)をバックにして前面(ぜんめん)に立(た)ち姿(すがた)の美人(びじん)を描(えが)いたもので、全(ぜん)シリーズを通(とお)し、バックの風景画(ふうけいが)は広重(ひろしげ)の保永堂版東海道(ほえいどうばんとうかいどう)に非常(ひじょう)によく似(に)ています。

製作時期(せいさくじき):文久(ぶんきゅう)3年(ねん)(1863)。板元(はんもと):越平(こしひら)(越村屋平助(こしむらやへいすけ)

画面(がめん)上部(じょうぶ)には宿屋(やどや)の人々(ひとびと)が並(なら)んで控(ひか)え、その前(まえ)を行列(ぎょうれつ)が通(とお)っています。たき火(び)の場所(ばしょ)では行列(ぎょうれつ)の者(もの)が煙管(きせる)に火(ひ)を付(つ)けている様子(ようす)も見(み)られます。
たき火(び)の色(いろ)が黒(くろ)くなっていますが、これは丹(たん)（あざやかなオレンジ色(いろ)の絵(え)の具(ぐ)）が酸化(さんか)したため（丹焼(たんや)け）で、本来(ほんらい)は鮮(あざ)やかな朱色(しゅいろ)で摺(す)られたものでした。

文久(ぶんきゅう)3年(ねん)(1863)の十四代将軍(じゅうよんだいしょうぐん)家茂(いえもち)の上洛(じょうらく)を意識(いしき)して出版(しゅっぱん)された東海道(とうかいどう)シリーズで「上洛東海道(じょうらくとうかいどう)」と言(い)われているものです。
このシリーズは、どの作品(さくひん)にも武士(ぶし)の姿(すがた)や大名行列(だいみょうぎょうれつ)が描(えが)かれています。東海道(とうかいどう)の宿場(しゅくば)だけではなく、街道筋(かいどうすじ)の名所(めいしょ)も取(と)り上(あ)げているため、150枚(まい)を越(こ)える膨大(ぼうだい)な揃(そろ)い物(もの)となっています。描(えが)いている絵師(えし)も三代(さんだい)歌川豊国(うたがわとよくに)、二代(にだい)広重(ひろしげ)をはじめ、十数名(じゅうすうめい)を越(こ)える当時(とうじ)の売(う)れっ子(こ)絵師(えし)が分担(ぶんたん)して描(えが)いています。

板元(はんもと):丸蔦(まるつた)

京都(きょうと)の三条大橋(さんじょうおおはし)（東海道(とうかいどう)の終着(しゅうちゃく)地点(ちてん)）に立(た)つ女性(じょせい)は、京都名物(きょうとめいぶつ)の一(ひと)つ「大原女(おはらめ)」です。手(て)ぬぐい（江戸時代(えどじだい)に広(ひろ)く使(つか)われた、タオルのような布(ぬの)）を被(かぶ)るなど特徴(とくちょう)的(てき)な装束(しょうぞく)で、頭(あたま)に蒔(まき) などを乗(の)せて売(う)り歩(ある)きました。

歌川派(うたがわは)の多(おお)くの浮世絵師(うきよえし)が東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)シリーズを描(えが)いていますが、芳員(よしかず)が描(えが)いたこのシリーズは、各(かく)宿場(しゅくば)にまつわる伝説(でんせつ)や逸話(いつわ)を面白(おもしろ)おかしく紹介(しょうかい)しています。全般的(ぜんぱんてき)に横小判(よここばん)の絵(え)の中(なか)にはユーモラスな図柄(ずがら)が多(おお)いとも言(い)われます。

製作(せいさく)時期(じき):嘉永(かえい)6年(ろくねん)(1853)。板元(はんもと):丸蔦(まるつた)

終着(しゅうちゃく)点(てん)の京都(きょうと)では、目出度(めでた)いということでしょうか、婚礼(こんれい)の席(せき)が描(えが)かれています。でも、ちょっと変(へん)。男性(だんせい)（花婿(はなむこ)）は銚子(ちょうし)をいくつも空(あ)けて酩酊(めいてい)の様子(ようす)。一方(いっぽう)の女性(じょせい)（花嫁(はなよめ)）は御鉢(おはち)を前(まえ)において、ひたすら大盛(おおもり)めしに箸(はし)をのばし、給仕(きゅうじ)の女子(じょし)が慌(あわ)てています。

歌川派(うたがわは)の多(おお)くの浮世絵師(うきよえし)が東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)シリーズを描(えが)いていますが、芳(よし)員(かず)が描(えが)いたこのシリーズは、各(かく)宿場(しゅくば)にまつわる伝説(でんせつ)や逸話(いつわ)を面白(おもしろ)おかしく紹介(しょうかい)しています。全般的(ぜんぱんてき)に横(よこ)小判(しょうばん)の絵(え)の中(なか)にはユーモラスな図柄(ずがら)が多(おお)いとも言(い)われます。

製作(せいさく)時期(じき):嘉永(かえい)6年(ねん)(1853)。板元(はんもと):丸蔦(まるつた)

大津宿(おおつしゅく)といえば三井寺(みいでら)の力餅(ちからもち)が有名(ゆうめい)ですが、「力持(ちからも)ちなら負(ま)けない」と、こちらも大津(おおつ)で有名(ゆうめい)な牛頭天王(ごずてんのう)（本当(ほんとう)は神様(かみさま)の名前(なまえ)で牛(うし)の頭(あたま)をしているわけではない）が大石(おおいし)を持(も)ち上(あ)げてのパフォーマンスの図(ず)です。

歌川派(うたがわは)の多(おお)くの浮世絵師(うきよえし)が東海道(とうかいどう)五十三次(ごじゅうさんつぎ)シリーズを描(えが)いていますが、芳(よし)員(かず)が描(えが)いたこのシリーズは、各(かく)宿場(しゅくば)にまつわる伝説(でんせつ)や逸話(いつわ)を面白(おもしろ)おかしく紹介(しょうかい)しています。全般的(ぜんぱんてき)に横(よこ)小判(しょうばん)の絵(え)の中(なか)にはユーモラスな図柄(ずがら)が多(おお)いとも言(い)われます。

板元(はんもと):丸蔦(まるつた)

草津宿(くさつしゅく)の茶店(ちゃみせ)で男性(だんせい)が食(た)べているものは、名物(めいぶつ)「姥(うば)が餅(もち)」。（あんころ餅(もち)・餅(もち)をあんこで包(つつ)んだもの）小(ちい)さなお菓子(かし)ですが、二人(ふたり)はたくさん食(た)べたようで、右(みぎ)の男性(だんせい)はおなかいっぱいのようです。

歌川派(うたがわは)の多(おお)くの浮世絵師(うきよえし)が東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)シリーズを描(えが)いていますが、芳員(よしかず)が描(えが)いたこのシリーズは、各(かく)宿場(しゅくば)にまつわる伝説(でんせつ)や逸話(いつわ)を面白(おもしろ)おかしく紹介(しょうかい)しています。全般的(ぜんぱんてき)に横小判(よここばん)の絵(え)の中(なか)にはユーモラスな図柄(ずがら)が多(おお)いとも言(い)われます。

製作(せいさく)時期(じき):嘉永(かえい)6年(ねん)(1853)。板元(はんもと):丸蔦(まるつた)

水口宿(みなくちしゅく)名物(めいぶつ)は干瓢(かんぴょう)。白(しろ)い干瓢(かんぴょう)を家(いえ)の柵(さく)に掛(か)けて干(ほ)しています。女性(じょせい)の持(も)つ、顔(かお)のようなかたちの大(おお)きなモノに馬子(まご)もびっくり。実(じつ)はこれは「夕顔(ゆうがお)」の実(み)。干瓢(かんぴょう)は「夕顔(ゆうがお)」（ウリ科(か)の植物(しょくぶつ)Calabash）の実(み)をひも状(じょう)に剥(む)いて作(つく)るのでした。

歌川派(うたがわは)の多(おお)くの浮世絵師(うきよえし)が東海道(とうかいどう)五十三次(ごじゅうさんつぎ)シリーズを描(えが)いていますが、芳(よし)員(かず)が描(えが)いたこのシリーズは、各(かく)宿場(しゅくば)にまつわる伝説(でんせつ)や逸話(いつわ)を面白(おもしろ)おかしく紹介(しょうかい)しています。全般的(ぜんぱんてき)に横(よこ)小判(しょうばん)の絵(え)の中(なか)にはユーモラスな図柄(ずがら)が多(おお)いとも言(い)われます。

製作(せいさく)時期(じき):嘉永(かえい)6年(ろくねん)(1853)。板元(はんもと):丸蔦(まるつた)

土山宿(つちやましゅく)は茶屋(ちゃや)の様子(ようす)が描(えが)かれています。縁台(えんだい)に座(すわ)っていると、厚化粧(あつげしょう)の女性(じょせい)が給仕(きゅうじ)に出(で)てきてびっくり。着物(きもの)の柄(え)の「当(あ)たり矢(や)」は「矢場(やば)」を意味(いみ)し、矢場(やば)＝女郎(じょろう)屋(や)の隠語(いんご)です。

歌川派(うたがわは)の多(おお)くの浮世絵師(うきよえし)が東海道(とうかいどう)五十三次(ごじゅうさんつぎ)シリーズを描(えが)いていますが、芳(よし)員(かず)が描(えが)いたこのシリーズは、各(かく)宿場(しゅくば)にまつわる伝説(でんせつ)や逸話(いつわ)を面白(おもしろ)おかしく紹介(しょうかい)しています。全般的(ぜんぱんてき)に横(よこ)小判(しょうばん)の絵(え)の中(なか)にはユーモラスな図柄(ずがら)が多(おお)いとも言(い)われます。